冷間金型用鋼のSKD11、プラスチック金型用鋼のSTAVAXに対して異なるショット材(A、B、C)を用いてWPC処理を施すと、残留応力や表面硬さが変化します。繰り返し負荷を受けることで割れや摩耗を生じる金型において、WPC処理により疲労強度や耐摩耗性を向上することが可能です。
これまで平均寿命1000本で寿命を迎えていたインサートチップに対し、異なるショット材(A、B)を用いてWPC処理を施しました。
従来は、刃先に欠けや段差を生じることで寿命を迎えるため、定数加工を1000本と固定していました。WPC処理によって寿命が延長できることが分かり、WPC処理の条件を再検討したところ、定数加工を1800本に引き上げることができました。
・ワーク材質:S45C(調質材)
・環境:切削油(ノズル噴射式)
WPC処理により寿命を迎えるモードが、『欠け』から『摩耗』へ
各種WPC(MD)処理面の表面3D画像を見ると、平滑面(SUS304 #700研磨面)に対して、凹凸が形成されていることがわかります。処理に使用するショット材の種類によって、形成される凹凸の粗さや凹凸ピッチ、凹部深さなどが変化します。目的によって最適な粗さのWPC(MD)処理をご提案します。
一般的に平滑表面に凹凸を付与すると、親水面はさらに親水面に、撥水面はさらに撥水面になることが知られていますが(Wenzelの式)、WPC(MD)処理では形成する凹凸によって親水/撥水の水濡れ性を制御することができます。例えば、SUS304の#700研磨面に対して各種WPC(MD=マイクロディンプル)処理をすることで、画像のように水接触角を親水にも撥水にも変化させることが可能です。
使用したテストピース
SUS304 #700研磨面(Control)