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当社の技術の環境への寄与について トピックス

2022年04月30日

㈱不二WPCならびに㈱サーフテクノロジーの環境対策への寄与について

【はじめに】

 本年(2021年)11月に,国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催され,不十分ながら,2030年までに気温上昇を1.5℃に抑えることが合意された。そうした合意の有無にかかわらず,温暖化対策は喫緊であることに違いない。温暖化は海水面の上昇や生態系の破壊など様々な影響を引き起こす,それらの変化が温暖化の不可逆性の臨界点を超える等の指摘も存在する。

 温暖化に対して,その主要な要因としてのCO2をはじめとした温室効果ガスの削減等様々な対策が取られようとしている。それらを含め,エネルギー使用量の総合的な削減や様々な環境汚染物質の排除等,従来の生産工程を前提とした生産様式の抜本的な改変が必要な時期に来ているとも言える。少なくとも,企業活動に関してもそうした環境負荷低減に関する取り組みや自社の生産する商品等の環境に関する影響に関して検討する必要がある。

 当社は,金属材料等の表面改質として微粒子投射処理(WPC処理,MD処理)並びにDLC被覆の受託加工を実施しており,以下,当社の受託加工に際しての環境への影響ならびに環境負荷低減の効果に関して示す。

【当社の受託加工工程の環境に対する影響に関して】

 環境負荷低減の取り組みが重視されているなか,低減のための製品の製造過程で,環境負荷物質が生成される,膨大なエネルギーが消費されるなどの矛盾した現実が発生しており,環境対策に関しては製造工程の検討が必要である。

当社での主要な受託加工の工程は微粒子投射処理(WPC処理,MD処理)並びにDLC被覆であり,各工程について示す。

微粒子投射処理(WPC処理,MD処理)は,数十µの微粒子を基材に投射し,基材(主として金属材料)表面に塑性変形を加え,圧縮残留応力の付与や表面形状の形成を行う処理である。微粒子投射処理で残留応力の付与を目的とするものをWPC処理,食品付着抑制のための形状形成を目的としたものをMD処理として差別化している。使用する微粒子は鉄系材料やセラミックスなどの汎用な材料であり,環境負荷物質は使用されておらず,回収して循環的に使用される。また,投射は圧縮空気によりなされるため,排水処理等の必要もない。基本的には,圧縮空気を作製するコンプレーサー用の電気のみが使用される。

当社のDLC被覆は,真空装置内で炭化水素系ガスを分解し,硬質炭素膜として形成する技術である。使用する炭化水素系ガスはプラズマで分解され,製品,真空チャンバー壁ならびに排気系にトラップされ,ほとんど外部には排出されることはない。また,DLC被覆は環境調和型表面処理と呼ばれ,従来の,CrメッキをはじめRoHS(ローズ)規制(特定物質使用禁止指令)の代替として,また,生体適合性もあるためステントなどの医療材料にも使用されている。

さらに,当社のDLC膜はFDAに食品用適合と認定され,安全性も保障されている。

 以上の様に,当社の工程は環境に対して極めて負荷の少ない手法で実施されており,エネルギー消費の小さい,環境に優しい手法である。

 

 

㈱不二WPCによる環境負荷低減への寄与に関して

 

㈱不二WPC(以下,弊社)は,微粒子投射処理(WPC処理)による基材の疲労強度の向上,DLC被覆による摺動特性の向上を主たる目的に,外注加工を実施している。

各要素技術の環境負荷の低減を数量的に評価することは難しいが,環境負荷を生産活動の結果ととらえれば,国内総生産(GDP)等の生産活動と関係付けることが出来る。国際エネルギー機関(IEA)統計(2018)によれば,実績値で全世界でのGNPとCO2排出量は相関があり,2017年では,Global GNP 80(Trillion US$/yr)に対して33Gt (CO2/yr)のCO2が排出されている。

破壊事故による経済損失は,英国では国内総生産(GDP)の約4%に上ると報告1)されている。また,各種産業機械の破壊事故要因の80%以上が疲労破壊と言われている2,3)。そうした点から,破壊事故の防止は環境負荷の低減と言う観点からも非常に重要である。具体的には,各種産業機械の破壊の結果,破壊された機械を再生するための部品を製造するための工程での環境負荷が低減される。また,破壊事故は産業機器ばかりでなく橋梁や建物等の社会的インフラにも起きるため,社会的インフラの事故からの復旧には膨大な環境負荷が発生する。そればかりではなく,各種産業機械の破壊や社会的インフラの事故の防止は,国民生活にあたっての安全性の確保に対して極めて重要な課題である。疲労破壊が注目され始めたのは,日航機墜落事故(1985年)を契機としてであり,航空機や車両などの輸送装置の事故や社会的インフラの事故は直接人命に係るものでありその対策が急がれている課題である。

DLC被覆ならびに微粒子投射処理(WPC処理)との複合処理は,摩擦抵抗や摺動摩耗の低減に寄与する技術である。それら,摩擦摩耗を中心としたトライボロジーの分野が関連する経済損失もGNPの0.5~2.6%と言われており4),破壊事故と同等程度の環境負荷が想定される。トライボロジーの分野は,直接的に環境負荷の低減に寄与する。実際,世界の全CO2の約20%が、交通や運輸から排出されており,そのうち45%が乗用車とされている5)。自動車のエネルギー損失のうち摩擦摩耗損失に係る機械損失は12%(負荷50%時)と言われており,低負荷時ではさらに増大する。摩擦抵抗の低減は,機械損失を直接に低減するために,環境負荷低減効果は明瞭である。また,DLC被覆による摩耗の低減,微粒子投射処理(WPC処理)との複合による疲労強度の向上を複合化する事により,車両自体の軽量化もはかられ間接的にも負荷低減がなされる。

前述のように,微粒子投射処理(WPC処理)ならびにDLC被覆の環境負荷低減の優位性は,効果だけでなく生産プロセスでも確保されている。また,微粒子投射処理(WPC処理)ならびにDLC被覆の優位性は,使用される部品の特性向上,寿命延長であるために従来の生産工程の変更を必要とせずに導入することが可能である等の利点も有する。

 

1) Dowling, N.E., Mechanical Behavior of Materials, 4ed, Pearson Education Limited (2013)

2) 日本機械学会、技術資料:機械・構造物の破損事例と解析技術、日本機械学会 (1984). ,

3) 日本材料学会編、疲労設計便覧、養賢堂 (1995)

4) 長谷亜蘭: Journal of the Japan Society for Precision Engineering, Vol.81 No.7, 2015 643

5) 国際エネルギー機関(IEA)統計(2018)

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